マレーシア4日目。その日事件は起こった。(長いので、お暇な時の読み物としてどうぞ)
ホテルマヤを出た私はスリアKLCCをウインドウショッピング。その後、ペトロナスツインタワー下の緑あふれるKLCC公園で休憩しようと歩いていた。
「バサッ!」
うわっ、びっくりした。となりでいきなり日傘をさすマダム。
「Sorry..」
「問題ないっす、じゃ。」
と歩き出そうとした所、
「chinese?」
「ノンノン、アイムジャパニーズ」
以下、私の聞き取れた範囲での会話を日本語訳にてお送りします。
マダム(マ)「日本人なの?うちの娘は前に日本に留学していたわよ。ワシダ大学って知ってる?娘は日今マレーシアで日本語学校の先生をしているの」
タケト(タ)「ワシダワシダ・・・ああ、早稲田ね!へー日本語学校のせんせいを~そうですか~」
あはは、それではご機嫌麗しゅうマダーム。また合う日まで。
とさよならしようと歩き出そうとするも、はなれないおばちゃん。
マ「私も少し話せるのよ。ちょっと待って、娘に電話してみるわ。そういえばあなたは結婚してるの?」
タ(あーそれでさっきから少し日本語混じりで話してるのか。)
「結婚はしてないですよ」
(っておいおいなんで娘に電話してんの?日本国籍が欲しいのか・・?あやしい。。)
と思いつつも、日本語が通じることが少し嬉しい私はもう少し世間話につき合うことにした。
マ「今日本人の男の子と話しているのよ。今からうちでご飯食べるのよ。電話かわるわね」
タ(え!?いつご飯食べる話になったの!?全然そんな流れじゃなかったじゃん!おれ見逃した?聞き逃した?)
娘「ハーーイ、コニチワーー。ワタシニホンゴハナセマース。ゴハンタベルー?オーーケーー?」
タ(おいおいどんな話の流れだよ)やたらとゆったりとした口調で話す娘。
タ「私も日本語話せますよー。こんにちは。初めましてー。ご飯、ね。ご飯。うん、ご飯。ご飯、おれ食べに行くんですか?(半笑い)」
娘「イエース、アナターウチクルー。オーケーーー?」
タ(なんだこれは。初対面で家に連れ込まれて、お昼ご飯をごちそうになって、その対価として、娘を紹介されて、まあまあつき合ってみなよ、そしていつの間にやらマレーシア娘と結婚!おめでとー!!・・・なんてシナリオはおれの人生にはないですよ。
タ「うーーーん、ご飯ー?」
マ「30分くらいならいいんじゃない?」
頭を整理して状況を飲み込み、考える。
(マレーシア4日目、明日には帰国。この四日間、たいして面白いこともない。このまま日本に帰っても「楽しかったよー」で終わってしまう。そんなことをあのTOUMAIスタッフのみんなが許す訳がない。
そして目の前に転がるびっくり箱。鬼が出るか蛇がでるか。虎穴に入らずんば虎児を得ず。・・・とまあ、そこまで自分が何を求めているのかわからなくなってきたがとりあえずついて行ってみようかー!ふっふー!)
タ「オッケー!いくよー!」
タクシーに乗り込むマダム&タケト。
マ「タビロ~」とスナック菓子を差し出して来た。
(日本語で「食べろ」と行っているらしいが、なまっている。これが東北なまりっぽくて、東北出身の私は和む。)
タ「あ、いただきまー・・・」
そのとき、ふと頭をよぎる白川由紀さんの言葉
ゆきさん「睡眠薬強盗には気をつけてね!よくあるらしいから!」
タ(うっ・・・。これに睡眠薬が盛られているのか・・?いや、でも眠くなるという覚悟があれば、きっと耐えられる!おれ、カフェインも効かないし。)
という訳のわからない論理で自分を納得させ、
タ「・・・・ーす」
スナックをひとかじり。でもそれ以上はやめておいた。
タクシーで10分ほどの場所にそのマダムの家はあった。
「おおよくきたねー!いっらしゃーい!」
温かく迎えてくれるマダムの旦那さん、マダムのいとこのおばちゃん、マダムのいとこのおばちゃんの娘。
あれ?日本語教師をしているというマダムの娘は?
マダムのいとこのおばちゃん「今ね、彼女は病院に行っているのよー」 さらに雲行きが怪しいな。
マダム旦那「とりあえず食事の前にコーヒーでもどうぞ」
コーヒーをいただく。
マダム旦那「日本人?結婚はしているのかい?」 やはりそこがどうしても気になるのか。。
マダム旦那「いつからいるんだい?マレーシアは初めてかい?仕事?休暇?日本はどう?こっちは暑いだろう?これはインドネシアのテレビ番組だよ。昨晩は雨だったから映像がうまく映らないんだ。アンテナが調子悪くてね!」
おう、おおう、、質問攻め。旦那ぁ、そんなマシンガントークついていけませんぜ。
マ旦「ところでおれはカジノのディーラーをしていたんだよ。もう引退したがね。ところでカジノで大儲けできるとっておきのテクニックがあるんだ。教えてやるよ!こんどマレーシアに来た時はそれで一儲けしようぜパートナー!」
タケト「おーありがとうございます(棒読み)。また今度来ることがあったらねー(棒読み)」
マ旦「ご飯が出来たみたいだよ、タベロ!」タベロはみんな日本語なんだ。
食卓につく。えーと・・・ご飯とぉ、インゲン炒めとぉ、豚肉の皮を煮たヤツぅ?
あとはあとはー?
マダムのいとこ「タベロ!」
あ、はい、いただきまーす・・・。
まあちょっと面白いかなと思って付いて来てみただけだし、いきなり人の家にあがって出て来たご飯に文句を言うのも筋違い。「おいしいです!」もりもり食べ進める。実際、インゲンの炒め物は美味しかった。マレーシアの味付けは日本人向けだと思う。
マダムいとこ「日本のナショナルフードは何?」
タ「えーと、味噌汁とか、寿司ですかね」
マダムいとこ「たしかに私もよく知ってるわ。マレーシアは、ナシレマよ。お肉なんかと一緒に食べるの。」
タ「ナシレマね。へー。今食べているのは違うんですか?」
マダムいとこ「違うわ。今晩にでも食べてみるといいわよ!」
そうですね、食べてみよう。
さてさて、ささっと食べてお暇しますかね。お土産も買いに行かないといけないし。
「ごちそうさまでしたー!美味しかったです、ありがとうございましたー!ではおれはこれで・・・」
マダム旦那「食べ終わったか!よし、じゃあさっきのカジノのテクニックを教えてあげるよ!」
タ「え、いやいやいいですよ・・」
マ旦「まあいいからちょこっとだけだ!な!」
タ「え、あー、はあ・・・」
奥の部屋に連れて行かれる私。さらに雲行きが怪しくなって来たな。。
4畳ほどの狭い部屋に4人がけのテーブル。奥に座らされ、向かいにマダムの旦那が座る。私のとなり、入り口の扉がある側にマダムのいとこが座る。退路を塞がれた!おーい、大丈夫か。。
とりあえず、そこから40分ほどの間、ブラックジャックの手ほどきを受ける。私が英語が堪能でないことに加えてブラックジャックの正式なルールも知らなかったので、余計に時間がかかったのだろう。そこからさらに30分ほどかけて、その儲かるテクニックとやらの説明を受ける。
そのテクニックの、なんとまあ稚拙なことか!
ひとことで言えば、というか一言でしか言えないのだけれど
「マダム旦那が対戦相手のカードを盗み見て、指のサインでタケトにそのカードの内容を伝える」というもの。
ええー!幼稚園児でもわかりますやん!思わず関西弁で突っ込んでしまうよ!
そこへ旦那の携帯に、一本の電話が入る。
マ旦「ああ、Mr.リコー。ん?これから来る?わかった、待ってるよ。麻雀?オーケイ。じゃあ30分後に」
さらにさらに雲行きが怪しくなって来たなぁー・・・
マ旦「いまからリコーが来る。おれの麻雀仲間だ。彼は金持ちで、そしてゲイだ。彼とこれから一緒にゲームをしよう!麻雀はできるか?」
タ「できないっす。」
マ旦「そうか・・・あ!いいこと思いついたぞ!さっき教えたテクニックをつかってMr.リコーから金を巻き上げようぜ!なあマイパートナー!君と僕はパートナーだ!」
タ「(いつからパートナーになったんだ)えー、いや無理でしょ。むりむり!そんなの無理ですよ!(しかもリコーさんゲイって!その情報いらないでしょ!)そもそも30分くらいで帰れるって言ったから来たのにー!」
マ旦「あん?なんでだよ?確実に儲かるのに、このチャンスを逃す手はあるか?ないだろ!確実に勝てるんだ!」
タ「(確実にバレるでしょ!声にドスが利いてきてるし。半分睨みつけてくるし。。さっきまでの気のいいおっちゃんはどこにいっちゃったんですか)いやーむりむり。ダメダメ。もうだって時間ないし!過ぎてるし!帰る帰る!あたしゃ帰るよ!」
すると突然焦りだす、となりに座っていたマダムのいとこ。
マダムいとこ「帰るの?もう時間ないのかい?マダムの娘は18時に帰って来るけど、それまではいられないのかい!?」
タ「(今15時でしょ・・・いやだよこんな状況であと3時間も拘束されるの!そもそも今日はお土産を買うための日だったのに、全然時間なくなっちゃったじゃない!)いやー時間ないない。ないない。ないです!」
マダムいとこ「わかった。じゃあ送ってこう。急いで。車を用意してあるから。」
何故急に焦りだしたのか、何故こんなに急かされるのかもわからないまま、みなさんにろくに挨拶もせず家を出る・・・というか追い出される。表に停まっている車。準備がいいなぁー・・・怪しいほどに。
マダムいとこ「早く乗ってーダイジョウブダイジョウブ!」
この車に乗ったら、どこか人気のない所に連れていかれ監禁・・・
はたまたコンクリートで固められ、クアラルンプール湾(なんてあるのかしらないが)に沈められる・・・
それかこのまま病院に直行し内蔵を売られるとか・・・
いやいや、そんな危険なことはないよな・・・
不安と共に様々な憶測が頭に浮かんでは消え、浮かんでは消えて行く。
しかしこの状況では乗るしかないか。乗車拒否しても何されるかわかったもんじゃない。
マダムいとこ「これから病院に行くからね」
うそー!内蔵売られるパターンだったーーーーーー!予想的中!正解!
スーパーヒトシくんを下さい!
マダムいとこ「実はうちのグランマが心臓病なの・・・」
ん?いかんせん流れが読めない。とりあえず話を合わせる。
タ「難しい病気なの?」
マダムいとこ「ええ、明日、手術なの・・・」
そんなときに何見ず知らずの日本人呼んでご飯食べさせたあげく金儲けの話しているんですか!
あ、ああ、待てよ・・・もしや・・・
マダムいとこ「今から行く病院が遠いのよ・・・だからお願い・・・あなたの気持ちでいいから、持ってるだけのお金をガソリン代として置いて行ってくれない?もちろん、ここから一番近い駅にあなたのことは送ってあげるわよ」
そういうこと!?一連のこの流れ、この金欲しさの演技ですか、まさか。
面白半分でマダムについて来たものの、本当にこんなことにひっかかってしまうとは・・・。
いや、でも心のどこかでうすうすわかっていたはずだ。こういうことが起こるであろうことを。
タ「えー、うーんとりあえず駅まで送ってくださいよ?
マダムいとこ「わかった。だからガソリン代頂戴ね?」
今考えると、お金なんて置いて行かずに怒って降りればよかったのだが、この時は頭が混乱していて、冷静な判断ができなかった。
マダムいとこ「駅に着いたわよ。はい、ガソリン代は?」
働かない頭で考え「今これしかないですよ。ごめんね。と、手持ちの半分の20リンギット(日本円で7000円くらい)を置いて降りた。
そして馬鹿丁寧に「ご飯ありがとう御座います!」の言葉を添えて。
マダムいもうと「また会おうね!また来なよ!」
走り去る車。呆然と立ち尽くす私。次第に回転し始める頭脳。
ああ、やっぱり、金とられたんだなおれ・・・
でも命とられなかっただけましだな。こんな手口もあるんだな。
先ほどまでの緊張感と、まったく平和な日常の目の前の風景のギャップ。駅の構内を人々が素知らぬ顔で行き交っている。
ああ、日常と非日常はこんな風に隣り合わせで存在しているのか。
あ、思い出した。
そういえばゆきさんにもう一つ忠告を受けていたな。
「目が笑っていない人には付いて行かないでね。これは万国共通の法則。」
確かに日傘を開いた時のマダム、半分くらいしか目が笑っていなかったなぁ・・・
一つ大人の階段を昇った私は、電車に乗り込んで宿へと向かった。。。
「何はともあれ、タケちゃんが無事に帰って来てくれて良かったんだニャ〜!!」
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